あの月に向かって打て



エスペラントとスポーツ

トラックバックカテゴリ:スポーツ偉大なるエスペラント博士ことザメンホフが産み出した、“エスペラント語”。少し皮肉めいた書き方ではあるが、一応世界共通語である。使っている人は見た事がない。私の視野が狭いだけか?? 今回は別の世界共通語を話したい。

仕事で帰りが遅くなったり、遊びに行って電車で帰れなくなったりした時にタクシーを使う。タクシーに乗り込んで、最初に私が口を開く言葉は何か? 思い返してみると、一番多いのが、「おっちゃん、今日阪神どない?」だと思う。大概の運転手は「今日は負けてしもうたわ」や「今日は勝ったで!」。この会話から野球談義が始まる。最近の野球界はどうだ、阪神はこのまま強くなっていくのか、など自宅に着くまでそのプチ討論会は続く。

学生時代に留学させてもらった事がある。寮での生活だったが、そこにはイタリア人がいた。彼の名前はロベルト。イタリア人ということだけしか知らない。ある日キッチンでたまたまロベルトに会った。私がひと言「カルチョ(イタリア語でサッカー)は好きか?」と聞いた。彼はこっちを向いている。続けて私は、「僕はカルチョが好きだ。特にイタリアではラツィオ(当時は)が好きだ」と言った。その瞬間には私はロベルトに抱きしめられていた。「お前は私の友だ!僕はローマ出身だ!」イタリアの名門クラブラツィオはローマのチームなのだ。何年も昔から友人のように会話は弾む弾む。それからというもの、ロベルトは私を見かけるたびに、どんなに遠くにいても声を掛けてくれる。カルチョが私達を結んだのだ。

ある日、ロベルトが寮でピッツァパーティーを開いた。どうやらイタリア人だけで開かれている様子で、他の寮のイタリア人も多く集まっていた。そこに私がロベルトから特別に招待を受けて参加させてもらった。ロベルトが皆に手作りピッツァを振る舞い、私も手伝った。その中でロベルトが皆の注意をこちらに引いた。いきなり私の肩を抱きながら、皆の前でこう言った。「こいつはカルチョにクレイジーだ! 嬉しい事にラツィオのファンだ!」その場は何故か異常に盛り上がった。皆が私にワインやビールを注ぎに来てくれたり、話に来てくれたりした。ローマ出身の女の子と仲良く話していると、横を歩いていた人が僕に「お前とは話さないよ。俺はミラノ出身だ。」と笑いながら言った。どう見ても、めちゃくちゃカルチョトークをしたそうであったのだが… 次の日から学校に通うと、ほとんどのイタリア人が僕を見つけると話しかけてくれた。自分がイタリア人になったかの様な一体感は非常に心地良かった。

私が滞在していた寮は留学生が多く集まる寮で非常に多国籍だった。例えば、イタリア人・韓国人・トルコ人・台湾人・ドイツ人・香港人・コロンビア人・ベネズエラ人・ブラジル人などであった。それほど大きくなかった寮に、よくもまぁこれほどの人種が集まったものだ。面白かったのはドイツ人とコロンビア人だ。両方とも女性で、当時の私のイメージだとサッカーにはあまり興味は持っていないような気がしていた。しかしそれは甘かった。

リビングでテレビを一人で見ていると、コロンビア人の女の子が入ってきた。ちょうど私はテレビでサッカーを見ていたので、「好きなチャンネルに変えてもいいよ」と言った。しかし彼女はサッカーが見たいという。ここからサッカー談義が始まった。私は94年アメリカワールドカップの話をした。ワールドカップ予選で彼女の国コロンビアは、あのアルゼンチンを敵地で5点を奪い沈黙させた。これでコロンビアは一躍ワールドカップ優勝候補に挙げられた。しかし、悲劇は起こった。コロンビアはたった一人の男に夢を粉砕された。ゲオルゲ=ハジは東欧のマラドーナと呼ばれるルーマニアの英雄だ。ハジに粉砕され、地元アメリカにも敗退したコロンビアは失意のうちに帰国する。悲劇はそれですまなかった。アメリカ戦でオウンゴールをしたエスコバルが帰国後、何者かの手によって射殺されたのだ。このような流れの話を延々と我々は話した。彼女の親戚はコロンビア代表のGKだと言う。リザーブの選手だったので名前は忘れてしまった。彼女曰く、コロンビア敗退の理由は、チームの内部分裂だという。しかし、失望はあまりにも大きかったと… 最後に「あなたにとって最高のストライカーは誰か?」と質問してみた。彼女はすかさず「マルコ」と言った。マルコ=ファン=バステンを指す。てっきりコロンビアの選手が出てくると思ったのだが、「意外と冷静だ」と感じたし、「ちゃんとサッカーを見ているのだな」とも思った。もともと私はオランダファンなので嬉しかったのは強く覚えている。(ちなみにラツィオが好きだったのはシニョーリという選手が好きだったため)

ドイツ人の女の子も同じだった。二人で夕日(時間は夜だがサマータイムで明るい)の美しいテラスでビールを飲みながらサッカーを熱く語った。

日本人が留学をすると、日本人同士で固まって、日本語しか話さなくなってしまう傾向が多々ある。これは私も良く見てきた。また、ひとり部屋に引きこもって国際電話ばかりして、月に10万も電話料金を支払っている人も見た。幸い、私はそのような経験をする事がなかった。英語を学びに言ったのだが、英語以上の世界共通語を発見して帰ってきた。もちろん、その世界共通語のおかげで英語もだいぶ上達した。一番何を苦労したかと言えば、野球を見たこともないスイス人を連れて、MLBを観に行った時だ。「何故バットにボールを当てると右回りをしなければならないか」からの説明には疲れた。ダブルプレーの説明には私の脳はパンクしそうになった。

そのような経験も経て、スポーツを通じたコミュニケーションというものを肌で感じてきた。むしろ、スポーツがあったから話したことも無いような国の人々とつながりを持てたのではないか、私はそう思う。あれから10年ほど経った今でもスポーツ世界共通語を再認識した出来事があった。しかし、それはまた別のコラムでお話したいと思う。言えることは、アメリカに行くならNBA・MLB・NFLのどれかを知っておいた方がいい。それ以外の国なら、圧倒的にサッカーは人気がある。訪れる国のサッカー事情を少しでも予習しておけば、現地の人とコミュニケーションをとる時に随分助けになる。ただし、地域同士でいがみ合っている場合もあるので、それだけ注意。英語をうまく話せなくても世界共通語を知っていれば、だれもフレンド・アミーゴになれるのだ。
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by mau46 | 2005-10-05 23:51 | スポーツ
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