あの月に向かって打て



アーセナルVSブラックバーン 活劇  =キックオフの巻=

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とにかく寒い。それにお腹が空いてきた。そこで私は席を離れて売店へ行った。そこではホットドッグが売っていたので購入。その際、店員に好きな選手を聞いた。彼はすかさず、
「ヘンリー!」
と言った。私は誰のことかわからず聞きなおした。彼は、
「ヘンリー。ナンバー14!」
そうか。彼はティエリー=アンリを指していたのだ。
ティエリー=アンリはフランス代表のフォーワードの選手で、アーセナルでもフォワードを務めている。彼の実績は申し分ない。卓越したスピード、類まれなゴールセンス、そして鋭いフリーキック。また、私が敬愛するデニス=ベルカンプとの息もぴったりなのである。
アルファベット表記すれば、Thierry Henry。店員は英語読みをしていたのだ。彼に理解した旨を告げると、
「どこから来た?」
と聞かれた。日本からと伝えると、わざわざ観に来たことを喜んでくれた。また、
「お前は試合が観れていいな。俺たちはいつも裏だから試合が観れないんだよ。」
とうらやましがられた。シャーロックホームズ博物館の警察官と同じだ。ホットドッグとカフェラテを買った。
”その気になればいつでもチケットを購入して観に来れるくせに。そっちの方が羨ましいわ!”と心でつぶやきながら彼らの嫉妬心を背に受けて席に戻った。

ホットドッグとカフェラテが私の体を温めてくれたので、落ち着くことができた。すると、選手のウォーミングアップが始まった。ビジターであるブラックバーンのキーパーが出てきた。彼らが練習を続けていると、後から選手達が現れてアップを始めた。
”これが世界トップリーグの練習か”
私は彼らを凝視しながらホットドッグをかじっていた。観客もぞろぞろ集まってきた。

やがて観客がどっと沸けば、アーセナルの選手がピッチに登場した。

身震いがした。目の前にデニスがいる。アンリもいる。なんと豪華なメンバーだろう。そのほとんどの選手が各々の国の代表選手なのだ。
例えば、フランスで言えば、ティエリー=アンリ、ロベール=ピレス(代表引退したっけ?)。オランダはロビン=ファン=ペルシー。スペインはホセ=アントニオ=レイジェス。スウェーデンはフレデリック=ユングベリ。もちろんイングランド代表はソル=キャンベル、アシュリー=コールなどが挙げられる。その他多くアーセナルはタレントをそろえている。

あまり引っ張っても仕方ないのでゲームの方へ話を戻そう。

アップも終わり、選手は着替えを終えて再びピッチに戻ってきた。その頃には観客席はサポーターで埋まっていた。私の席はバックスタンドで、ピッチに向かって右側の前から30番目の席。障害物もなくピッチ全体が見渡せる良い席だ。右手をみるとゴール裏の席の私側にブラックバーンサポーターの一角があった。彼らは厳重にStewardによって囲まれていた。Stewardは蛍光オレンジのジャンパーを着ていたので一風変わった空間ができていた。まるで養殖のいけすの様だった。

選手同士が握手を終えると、センターサークルに集まった。場内アナウンスが流れる。
ジョージ=ベストを悼む、黙祷を捧げるためだ。
偉大な選手のためにスタジアムは敵味方関係なく無音地帯となる。ただ黙祷開始の審判のホイッスル以外は。
私も黙祷を捧げた。日本語でメッセージを残しても彼は理解できないであろうから、とりあえず英語でジョージに話しかけた。

再び甲高い審判のホイッスルが鳴り響くと大歓声が起こり、センターサークルにはアンリとベルカンプだけになった。


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キックオフだ。

試合開始とともに驚かされた。両チームのディフェンスラインの高さだ。サッカーをわからない方もいるであろうから簡単に説明すると、ディフェンスラインとはキーパーを除くチームの一番後ろの選手のいる位置だ。それが後ろにあればあるほど守りに入り、前にあればあるほど攻撃的になる。もちろん後ろに下がれば攻撃に迫力はなくなる。前に出れば攻撃に転じやすい。しかしその分ディフェンスとキーパーとの間にスペースが空き、そこを狙われるリスクがある。それが両チームともにディフェンスラインを上げているのだ。ボクシングで言えばノーガードで打ち合うようなものか。つまり両チームとも”やる気”なのだ。

さらにアーセナルの強さを感じた事がある。ボールが落ち着くのだ。これは、どんな状況であってもベルカンプとピレスの二人にいったんボールを預けると、ボールが落ち着く。彼らがボールをキープすれば、よっぽどの事がない限り奪われる事はない。彼らにボールを預けると他の選手は安心して攻撃のために前方へ上がれる。セーフティーにボールをキープできる選手が二人もいるのだ。これは心強い。彼らがボールを受けてそれから他の選手へパスを供給し、攻撃のリズムを作っていく。それによりアンリの敏速な動きが活かされてくるのだ。

しかしブラックバーンも負けていない。前述したディフェンスラインの高さで必死にベルカンプとピレスに早めのプレッシャーをかけ、良いパスを出させない。

その間サポーターは....

ブラックバーンが何をしてもブーイング。寝ても覚めてもブーイング。また、日本のプロ野球のように応援団がいるわけではなさそうだ。タイコを持ったにいちゃんはいるのだが。しかし決まった掛け声があるらしく、誰かがワンフレーズを叫ぶとそれに呼応して他のサポーターも続きを歌いだす。これが見事なのだ。この掛け声は多くのパターンがあり、それを誰が歌いだしてもかまわないのだ。私もやってみたかったがそれには少々身の危険を感じる。
「お前に何がわかんねん!」
と大阪弁ではこないであろうが、そうなりそうな雰囲気が少しした。
しかし感心したのは、サポーターはみんながきちんと着席して応援していることだ。
Highburyには二つモニターがあり、試合開始前には、
『If you love football, please sit down』
と映し出されていた。それを守っているのだ。”さすがは紳士の国”と思っていると、アーセナルがチャンスとなるや、みんな総立ち。それに続いて私も立つ。チャンスが終わるとドミノのように着席。これの繰り返しである。段々私も慣れてきた。しかしイングランドのサポーターは声がよく出る。低く通るのだ。しばらくするとサポーターも熱くなってきたのか、掛け声がヒートアップしてきた。だいたいいつも良く声を出すにいちゃんが数人いたのだが、その内の一人が立ち上がって選手を鼓舞しだした。それに続いて他のサポーターも声を出すのだが、ひと段落してからすぐに警官が飛んできた。
「ちょっとこい。」
呼び出されて、
「あんまり調子に乗るな」
とでも言われたのであろう。注意された彼はすごすご席に戻った、と思いきやすぐに絶叫。要は着席していればいいのである。そうやって警官に呼ばれる人数名。しかしわかる気がする。座らせておかなければ、いつ彼らのヒートアップが沸点に達してフーリガン化するかわからないからである。そのために機先を制しているのだ。

ゲームに戻ろう。
ブラックバーンはよく戦っている。何度もアーセナルのアタックを弾き返している。ゴール前に詰められても耐えしのいでいるのだ。
しかしそれが続いたのは5分だけだった。

ゴール前からこぼれたペナルティエリア外のボールを疾風のように走りこんできたアーセナルのセスクが狙う。一瞬の隙だったのだろう。ブラックバーンがボールを弾き返した安堵感がセスクの視界を広げさせた。狙い済ませたようにゴール右隅に。若干のカーブをかけながらのファインゴール。あれではキーパーは取れない。

サポーターは大変だ。ゴールの瞬間総立ち、絶叫、そしてブラックバーンサポーターへの怒号。一粒で三度おいしい感じがした。ブラックバーンは良く守っていただけに不幸な失点だった。

ブラックバーンはその後も失点をしてしまう。アーセナルがロベール=ピレスにボールを預ける。ピレスがダッシュし切れ込むかと思ったその瞬間だった。矢のようなグラウンダーのパス。
「誰がいるんだ?」
アンリだった。アンリがブラックバーンディフェンダーと左付近をかけっこをしていた。と思ったらすでに抜いている。アンリは倒れこみながら逆サイドのゴール右隅にボールを流し込む。なんとデリケートなシュートだ。あれだけのトップスピードでいながら、優しいボールタッチでダイレクトにゴールへ確実に流し込む。簡単なシュートではないハズなのだが... ピレスのパスも素晴らしい。アンリのスピードを考え、アンリだけが追いつける場所にピンポイントでボールを転がしている。完璧なフレンチコネクション(知ってる??)だ。

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これがアンリのHighburyにおける通算100点目だ。観客は喜び狂っていた。彼らはアンリを神の様に崇めている。

これでゲームはほぼ決まってしまったか。あとはお祭り騒ぎの乱痴気騒ぎだった。ブラックバーンのチャンスに沸くブラックバーンサポーターに対して、彼らの攻撃が失敗すると、
「Sit Down, Shut up Sit down Shut up」
の連呼。なんの節で歌っているのかと思えば、ビッグベンのチャイムの音。日本の学校のチャイムと同じ節だ。はい、皆さんも歌ってみましょう。

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するとどこからともなく、
「F★ck Off, MOURINHO(モウリーニョ)! 」
の大合唱。モウリーニョとは、現在プレミアリーグ1位を独走しているチェルシーの監督だ。アーセナル監督のベンゲルとのちょっとした確執もある。しかし今は関係ないのにみんなで絶叫している。それがなんと美しくF-Wordのハーモニーになっていることか...
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ヨーロッパなどの他国を応援する日本のサッカーファンに伝えておきたい。選手名はラストネームだけでなく、ファーストネームも覚えておかなければならない。基本的に掛け声はファーストネームで行われる。最初はこれに戸惑った。
そういえば稲本がアーセナルに移籍してこう言っていたことがある。
「練習にはテレビで見たことのあり知っている選手が多くいて改めて驚いた。でも互いにファーストネームで呼び合うので誰が誰かわからなかった。」
と。アンリがゴールを決めると、ファンは「ティエリー」とファーストネームで叫ぶ。だからこれから海外サッカーファンはファーストネームで呼ぶことを心がけるとヨーロッパに行くと苦労しないかも。ただ、アンリの掛け声は「ティエリー=アンリ」と多少独特な節で応援もしていたもの事実だが...


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面白かったのは、アーセナルの左サイドバックの、パスカル=シガンだ。彼は本来スタメンでない。アシュリー=コールがケガをしているため代役で出ているのだ。これがまた危なっかしい。サポーターも非常に心配しているようだ。シガンのところへボールがくると、
「Cygan(シガーン)!!!!」
と叫んでいた。意外に今日は頑張っていたのだが、彼がサポーターに相当心配をかけているのがよくわかった。


ゲームはそのままアーセナルが相撲で言う”がぶりより”のような感じでプッシュしまくり後半へ向かう。
その後私はベルカンプをはじめとするアーセナルのプレーに酔いしれることになる

またまた続く...(引っ張りすぎ??)

<補足>
画像1:キックオフの瞬間。中央左ベルカンプ右アンリ(えんじ色のユニフォーム)。ピンボケ御免!筆者も興奮していたものですから
画像2:アンリにパスを出したロベール=ピレス(男前)
画像3:ブラックバーンサポーターに怒号をプレゼントするアーセナルサポーター
画像4:チェルシー監督モウリーニョ。サムソンの看板でカッコ良かったのでアップ。
画像5:仲良くなった、アンリ命のアーセナルサポーター。笑顔で見せてくれていたのだが、アーセナルの選手が倒されたので、すかさず怒鳴り散らす
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by mau46 | 2005-12-01 20:42 | スポーツ
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