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あの月に向かって打て



アーセナルVSブラックバーン 活劇  =後半の巻=

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前回のキックオフ編は長すぎた。
少々読みにくいところもあったかもしれない。
この後半はなるべく短めにするので、終了までお付き合い願いたい。

さて、ハーフタイムが終わり後半が始まった。
前半に比べ、ブラックバーンのプレスが弱くなっている気がした。それはそうだろう、前半で2点差は絶望に近い。ここはHighburyだ。アウェー戦での2点差をひっくり返すには相当な戦力差が必要である。残念ながらブラックバーンにそれは望めない。考えられる策といえば、高さではアーセナルのディフェンスに弾き返されてしまうので、スピードのある選手をとにかく走らせて、足元での勝負しかない。空中を牛耳ることはできない。

それがまたうまく機能しない。うまくイングランド代表のディフェンダーであるソル=キャンベルがカバーする。ブラックバーンは押してはいるのだが、最終的なアクセントが足りないようだ。
(画像:ソル=キャンベル画面中央の23番)
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アーセナルは選手個々の能力を駆使して攻撃するのに対し、ブラックバーンはロングパスなどを駆使して攻めている。
そこで我々の眼を驚かせたのは、ホセ=アントニオ=レイジェスの突破だ。彼はスペイン代表の快速FW(フォワード)で非常に運動量も多く、本来のポジションである左に関係なく縦横無尽に走り回り、引っ掻き回す。そのホセ=アントニオが自陣付近から相手DF(ディフェンダー)を引きずりながら快走。ユニフォームを引っ張られながらドリブルする姿を見て、日本代表に欲しいハングリーさだと思った。結局止められはしたが、観客は総立ちのスタンディングオベイション。
「ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!」
私もこの歓声には加わって大合唱してみた。なんと爽快な事か!

しばらくすると、ホセ=アントニオはフラミニと交代する。その時にも、
「ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!ホセ=アントニオ!」
彼は頭の上で拍手をし、観客のそれに応える。選手としての幸せとはこの瞬間なのだろう。
(画像:ホセ=アントニオ=レイジェス画面中央の9番)

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やがて、ロベール=ピレスも交代する。代わって出てきたのは、フレデリック=ユングベリだ。彼はスウェーデン代表で彼も並々ならぬ足を持っている。走り出しからターボがかかるような加速で彼もポジションにこだわらず、攻守にわたって走り回る。
(画像:フレデリック=ユングベリ画面中央の横を向いている人)
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その後、ベルカンプが後方から来る浮いたパスをディフェンダーを背負いながら、ボールを自身のヒールに当て抜き去ると言ったアートを披露した時、観客は頭を抱えてそれぞれの目を疑っていた。そうだ、デニス=ベルカンプのテクニックはただのテクニックにあらず。そこに美しさのエッセンスがこめられているのだ。
「醜い勝者になるか、美しい敗北者になるかだ」
クライフは言った。彼は私の愛するオランダフットボールを作り上げた張本人で、独特の哲学を持っている。
「ただ勝つのではない、美しく華麗に勝利する」
彼のマネージメントするサッカーにはいつもそのメッセージがこめられている。そのクライフの申し子たちは、強さだけでなく美しさもピッチ上で披露する事を義務化されているのだ。目の肥えたイングランドサポーターが目を丸くし、自分の目を疑う。そんな矛盾を私は体験しデニスに酔いしれた。私が観に来たものはこれだったのだ。

デニスは今年でアーセナルを後にする。長い激闘の幕を下ろすのだ。彼はアーセナルを去る代わりにプレゼントを残してくれる。それが今からピッチに登場する、ロビン=ファン=ペルシーである。満を持しての投入。将来有望なこの若いオランダのライオンはティエリー=アンリとデニス=ベルカンプを見て成長している。そのボールタッチは繊細でアンリに似ている。アンリへのパスはデリケートでデニスのそれである。デニスと交代した彼は試合終了間近、右サイドでボールを受けた。マークするのは2人。彼は二人の間にボールを通す。それはまるでアンリの突破だ。足運びまで似ている。抜いたときには、その得意の左足からボールは離れていた。美しいカーブを描きながら、その位置からは見えないはずのゴールマウスを無理やり見える角度になるようにボールを曲げ、キーパーの頭を越えて静かにサイドネットに落ちた。我々は再びアートを眼にしてしまった。

私は未来のアーセナルを見た気がした。デニスもこれをみて、オランダの将来を安堵した事だろう。
皆さんも来年のワールドカップでオランダ代表のロビン=ファン=ペルシーに注目してもらいたい。

試合は3-0という結果だった。ブラックバーンは終始ボールを動かし試合も動かしたが負けた。

それはブラックバーンは料理好きだが、味付けがうまくいかず、
アーセナルはプロセスはともかく、見た目も素晴らしく、絶妙な味付けの料理を出した。

そんな試合だった。
(画像:兵どもが夢のあと)

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私はHighburyを後にした。寒さで再び空腹が私をノックする。恐ろしいイングランドの食事を済まさねばならない。

明日はフルハム対ボルトンだ。
ボルトンには中田英寿が所属している。なんとか試合を見に行きたいのだが、街のチケット屋に行っても、ホテルのコンシェルジュに頼んでも手に入らないという。
私は見に行くことができるのであろうか!?

こうご期待!
by mau46 | 2005-12-05 18:15 | スポーツ
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