○ イタリアVSドイツ (2-0)
延長戦にまでもつれ込んだ一進一退の打ち合いは、「PK戦」という言葉が頭に浮かんだドイツに残酷な結果となった。
それまではピンピンに張られていた緊張の糸が、延長後半終了間際に一瞬緩んでしまったように見えた。
いや、「勝ちたい」と言うイタリアの精神的なターボに火がついたのか、彼らは一瞬たりとも「PK戦」は考えなかったのであろうか。
いずれにしても、その瞬間にイタリアがドイツの全てを否定する1点を決める。
私には前者の、「PK戦」と言う言葉がドイツの頭をよぎったというのが正しい様な気がする。
ドイツには圧倒的なホームアドバンテージがある。その中でPK戦になった場合、ドイツが勝つ可能性は高いであろう。
それにドイツは準々決勝のアルゼンチン戦でもPK戦で勝ってきている。
その甘い思い出が彼らの脳を揺らしたのではないか。
しかし、それがドイツによぎったのは、ほんの数秒。もしくはコンマ数秒であったろう。
そこをイタリアのピルロが、コンマ何秒の隙間にパスを通したのだ。
まるで走っている電車の連結部分にボールを通すように。
まさに、
「ここしかない!」
というチャンスだったのであろう。
残りの1点は完全におまけである。
攻めることしか選択肢が無くなったドイツに対して、イタリアは冷静にとどめを刺すだけでよかったのである。
今日のドラマはわずか1分ほどのショートショートだ。
そのハイライトはわずかコンマ数秒に集約される。
気まぐれな勝利の女神はずっと自分を見つめてくれる、
そんなマメ男のイタリアが好きだったようだ。