あの月に向かって打て



<   2006年 04月 ( 1 )   > この月の画像一覧


戦士落陽

e0090292_19152285.jpg


先日、ウィラポンが負けた。
いや、日本風に書けば、”長谷川穂積がウィラポンに勝った”と言うべきであろうか。

スポーツ好きの人はウィラポンという名前でわかるであろうが、
彼はウィラポン=ナコンルアンプロモーションと言う。
タイ王国の生んだ偉大なボクシングのチャンピオンだ。

辰吉丈一郎を二度破ったと言えば、ピンとくる読者も多いのではなかろうか。
さらに西岡利晃とも激戦を演じている。

簡単に説明すれば、彼はデビュー4戦目で世界チャンピオンとなる。
日本では考えられない数字だ。
これには少々カラクリがあって、タイの選手はボクシングを始める前にムエタイをやって実績をつけているケースが多い。
つまりその実績を加味して、デビューしてすぐのタイトルマッチへの挑戦権が与えられる場合があるのだ。
このウィラポンの考えられないタイトル奪取はそれによる。もとからムエタイでの戦績が良かったのである。
ウィラポンは初防衛に失敗するも、その後は無敵の快進撃を続ける。
辰吉を撃沈し王座に返り咲き、そのまま王座を守り続けた。

ウィラポンの素晴らしさは、彼のストイックなまでのボクシングに対する姿勢である。
38歳というボクシングとしては高年齢でありながらも、あの完成されたボディを仕上げてくる姿はさすがだ。
おそらく相当減量もキツイであろう。しかし彼はキッチリ合わせてくる。
さらにリング上でも非常に紳士である。
そして彼は戦士である。

常に前を向き、前に進みながら戦う。
下がることはしない。いや、下がることを知らないのかもしれない。

辰吉や西岡、そして敗れた長谷川戦でも、彼はいくら打たれても下がることはしなかった。
前進することから活路を見出す戦士なのだ。

正直、私はウィラポンの限界を感じていたところがあった。
やはり年齢から来るスピードの衰えは隠せない。

それが、3月25日の長谷川戦に結果となって表れた。

スピードの差は歴然としていたが、彼は下がらない。
むしろ前進する歩みを強めようとする。

9R、長谷川の狙い済ました右のフックがウィラポンを捕らえる。
ウィラポンは倒れた。前に崩れ落ちるように。
私はそこにウィラポンの美学を感じた。

彼は下がってパンチを受けずに、進んでパンチを受けた。
顔面からキャンバスに倒れこんだウィラポンは美しかった。
戦士の最期とはそういうものなのであろう。
倒れるまで勝ちにいき、そして力尽きたのだ。


なまじ判定での敗戦となれば、ウィラポンは衰えた身体に嘘をつき続け戦わねばならないであろう。
戦士は前進し敗れた。

戦士の落陽。

ウィラポンは名チャンピオンとして名を残すが、敗れる姿も素晴らしかった。
57戦52勝(37KO)3敗2分
この数字を見ても、ウィラポンは美しい。

ありがとうウィラポン。
”戦う”という事を教えてくれた。
e0090292_19153397.jpg

[PR]
by mau46 | 2006-04-04 19:19 | スポーツ


スポーツに関するコラムを書いてます。
カテゴリ
全体
スポーツ
ロンドン旅日記
シンガポール旅日記
香港旅日記
未分類
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のトラックバック
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧