あの月に向かって打て



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負けて男の名を上げる


斉藤和己。

思い出すのは2003年。我がタイガースと戦ったホークス。
第1戦の先発は共に20勝をあげた井川と斉藤。
ゆったりしたフォームから見せる快速球が20勝投手たる威厳を知らしめていた。

私はこの投手はこの時だけの投手と思っていた。

井川はその後のシーズンも不安定さはあるものの、年間200イニング以上を投げエースとしての本業はこなしていた。一方、斉藤は翌年は10勝どまりだったが、その後安定した勝ち星をあげて着実に成長していった。いい意味で私の予想を裏切った。すごい投手になった。

そして昨日の天王山10月12日の日だった。

中4日という強行スケジュールで登板した斉藤は、日ハムの八木と共に球史に残る投手戦を繰り広げる。
互いに球のキレがいい。斉藤のフォークボールのキレは見ていて美しかった。

サヨナラ負けしたとは言え、斉藤のピッチングを責めるものは一人もいないであろう。小笠原敬遠の後のセギノールの攻略は美しささえ感じた理想的な攻めだった。インコースに意識を持たせて一旦外に逃げた後、低目から消えるフォークボール。セギノールのバットは空を切る。正直これで乗り切るのはないかと思った。次は稲葉。ここで斉藤が投げた球は151km/hの真っ直ぐ。ここでこの球を投げる斉藤に感動をおぼえた。

「この男には、どんな力が残っているんだろう・・・」

次のフォークボールが明暗を分けた。稲葉がフォークボールに合わせてピッチャー返し。斉藤は身体で止めようとするが間に合わない。「抜ける!」その時、疾風のように飛びついたセカンドがボールを掴んでいた。そのままボールはショートがカバーするセカンドへ。

「あっ!」

球がそれた!ショートが飛びついてボールを捕ったものの。審判の判定はセーフ。

「ランナーは??」

すでにセカンドランナーがホームを駆け抜けていた。サヨナラ。
今年の日ハムには神がかった勢いがある。それに抗うかのように運命を切り裂こうとした斉藤和己のピッチング。皮肉にも斉藤の怒涛のピッチングは日ハムの優勝を飾りつけるものになってしまった。

しかし、それほど斉藤の投げた球には魂がこもっていた。あの球を投げられては攻略の要素がない。

斉藤はその瞬間崩れ落ち、人目もはばからず涙を流した。どんな思いだったろうか・・・
「ここまで投げきってまだ勝てないか・・・」
「ここまで我慢したのに、どうして打たれたんだ・・・」
彼の胸中を図ることはできない。自ら立ち上がる力も投球に注ぎ込んでしまった斉藤はズレータとカブレラに肩を借りなければ、引き下がることもできない。

そこには異種独特の美学があったように思う。
『負けて男の名を上げる』
素晴らしい、斉藤。

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君のピッチングは1球1球に熱い魂がこもっていた。それが札幌から大阪までビシビシ伝わってきた。また痺れさせてくれ。ただ、日本シリーズで阪神とあたった時は、悪いが加減してくれ。


追記:日ハムの両勝利投手を忘れるわけにはいかない。彼らは昨年の新人ダルビッシュと今年の新人、八木だ。日ハムは新戦力が非常に機能している。特に二人のピッチングは素晴らしい。ダルビッシュの最後のバッターへの150km/hを超えるストレートも素晴らしい。八木の右打者への胸元をえぐるクロスファイアも素晴らしい。日ハムは素晴らしいチームだ。あと、胴上げに田中幸雄を加えていたのも私の涙を誘った。
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by mau46 | 2006-10-13 15:44 | スポーツ


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