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あの月に向かって打て



トーナメント準決勝 7月5日

○ フランスVSポルトガル (1-0)


大人と子供のサッカー。そういった印象を受けた。

もちろん互いに非常にレベルの高いサッカーを展開したわけだが、
ポルトガルの挑発や欺きに、大人のフランスが乗らなかった。

むしろポルトガルにサッカーレッスンをつけているような感じまでした。
つまりそれはポルトガルのシミュレーション(あたかもファウルを受けたかの様に転倒すること)に対しては、

「そんなことしちゃダメなんだよ」

とやんちゃなポルトガルの頭を撫でながら、たしなめていた。それは決して叱りつけるわけではなく、どこか優しさに満ちていた。
その証拠にフランスのファウルは極端に少ない。ポルトガルと対戦してきたどのチームよりも少ないのではないか。

私はフランスの勝利の要因はそこにあると見た。

つまりポルトガルのサッカーに付き合わず、徹底して自分たちの大人のサッカーを貫き通した。
それがフランスの今日見せた強さであろう。そのサッカーは今日・明日に完成されるものではない。
'98ワールドカップ優勝、ユーロ2000優勝、そして'02ワールドカップのグループリーグ敗退。
彼らにはそんな歴史が積み重なっている。若いチームの挑発にはビクともしない、確固たるサッカーのロジックが成り立っているのである。

そんな中、大人に抗い続ける選手がいた。
クリスティアーノ=ロナウドである。

彼は何度壁に跳ね返されても向かっていった。自分のケガも省みず飛び込んだ。
その度、彼はフランスの壁の高さを知る。

今までの対戦相手ではうまくいった、ずるいプレーもフランスには通じない。
フランスサポーターもサッカーを知っている。
クリスティアーノがボールを持つだけで強烈なブーイング。チームを徹底して助けた。

圧巻はこの試合唯一の得点。アンリが受けたPKだ。

今までのポルトガルのお株を奪う「倒れっぷり」。
そして得たPKを外すジダンではない。

フランスはポルトガルの子ども扱いし、さらにポルトガルの得意技を使って勝った。

ジダンはついに自分の芸術を完成させようとしている。
下地は既に出来上がった。あとはどんなデコレーションで、自分を美しく飾れるかだ。

ジダンに捧げる。

「あとにはまっ白な灰だけが残る…燃えかすなんか残りやしない…。まっ白な灰だけだ。」
# by mau46 | 2006-07-06 13:07 | スポーツ

トーナメント準決勝 7月4日

○ イタリアVSドイツ (2-0)


延長戦にまでもつれ込んだ一進一退の打ち合いは、「PK戦」という言葉が頭に浮かんだドイツに残酷な結果となった。
それまではピンピンに張られていた緊張の糸が、延長後半終了間際に一瞬緩んでしまったように見えた。
いや、「勝ちたい」と言うイタリアの精神的なターボに火がついたのか、彼らは一瞬たりとも「PK戦」は考えなかったのであろうか。
いずれにしても、その瞬間にイタリアがドイツの全てを否定する1点を決める。

私には前者の、「PK戦」と言う言葉がドイツの頭をよぎったというのが正しい様な気がする。
ドイツには圧倒的なホームアドバンテージがある。その中でPK戦になった場合、ドイツが勝つ可能性は高いであろう。
それにドイツは準々決勝のアルゼンチン戦でもPK戦で勝ってきている。
その甘い思い出が彼らの脳を揺らしたのではないか。

しかし、それがドイツによぎったのは、ほんの数秒。もしくはコンマ数秒であったろう。
そこをイタリアのピルロが、コンマ何秒の隙間にパスを通したのだ。
まるで走っている電車の連結部分にボールを通すように。

まさに、
「ここしかない!」
というチャンスだったのであろう。

残りの1点は完全におまけである。

攻めることしか選択肢が無くなったドイツに対して、イタリアは冷静にとどめを刺すだけでよかったのである。


今日のドラマはわずか1分ほどのショートショートだ。
そのハイライトはわずかコンマ数秒に集約される。


気まぐれな勝利の女神はずっと自分を見つめてくれる、
そんなマメ男のイタリアが好きだったようだ。
# by mau46 | 2006-07-05 12:54 | スポーツ

中田の鳴らした鳴らないベル

晴天の霹靂か、はたまた来るべき日が来たと言うのか。
中田英寿はスパイクを置くことを決意した。

彼の伝えたかったこと。
彼のしたかったこと。

その歯車がうまく噛み合わないジレンマが、彼に「引退」の二文字を思い起こさせたのか。

“客観的に見なければ、自分がどの位置にいるのかわからない。”

それが今回の日本代表に言えた事であろう。

中田は外から日本を見ている。このままでは日本のサッカーは良くならない。
「日本国内にいる選手達は、内側ばかりを見て外を見ていない。」
「現状の自分のレベルに甘んじている。」
そういったメッセージが無かったであろうか。

日本は悲しいかな島国である。
私は運良く海外に行く機会が多く、その考えや文化に影響される事も多い。
しかし、それを日本の中で伝えようとすると必ず変な目で見られる。
基本的にはこうだ。
「アメリカかぶれが」
「ちょっと海外に行ったからって、カッコつけやがって」
これが日本の本質なのである。普段ハンバーガーやコーラを食べているヤツらに言われるのである。

日本という国は朱に交わって赤くならなければならない民族である。
その朱の中で青い存在は疎まれ、打たれ、そして赤に粛清されてしまうのである。

中田は外で厳しさを学んだ。そう、常にハングリーであった。
日本にいれば、確実にスタメンのエースとして扱われていたであろう彼が、
どんなにあがいても超えられない壁にいつもぶつかってきた。
ひょっとすると、日本人ということでサッカー的な偏見も受けたであろう。
ジャパンマネー目当ての中田取得と言うものあったであろう。

そんな中で中田ができることは、“実力でみんなを納得させる”これしかなかったのである。

しかしその中田の積み上げてきたデリケートな積み木を、
他の代表選手はただの中田の美しいサクセスストーリーとしてしか見ていなかったのではないか?

中田は努力の美談を聞かせたいわけでない、おそらくは本当に泥臭い話を教えたかったのであろう。
それは中田が外で孤独の中で、黙々と築き上げた積み木だったのだ。

「中田は外の人、すごい人」
「我々は内の人、中田とは違う人」

そんな目で中田を見ていたのではないか。

日本がブラジルに敗れてしばらく、川渕キャプテンは口を滑らせる。
「オシム・・・」
と。この完全犯罪は誰にも糾弾される事も無いまま闇に葬られてしまうことは間違いない。

中田はそれも見ていたのだろう。
日本サッカーの凄惨たる姿を。

成長をやめてしまっている日本サッカー協会のトップのあの醜態を・・・

中田は常にJリーグを気にして口にしてきた。
ただ単に「お客さんに来てもらいたい」という事を伝えたいわけではなく、
「Jリーグのレベルを上げる」これを意識していたのではないか。

外に出たものだけがわかる本当の実力。
それをいち早く察知した中田が、いつもその鳴らないベルを鳴らし続けていたのではないか。

その意味を理解したJリーガー、サポーターは何人いたのか。

楽しければそれでいい、おもしろければいい。
それでいいのであれば、今回のワールドカップの結果にとやかく言う資格は無い。
Jリーグだけをおとなしく見ておけばよいのだ。

中田は見ているものが違うのだ。
その、鳴らないベルを鳴らし疲れた時、それが今、スパイクを置く日だったのだろう。
# by mau46 | 2006-07-04 13:14 | スポーツ

トーナメント準々決勝 7月1日

○ イングランドVSポルトガル (0-0 PK1-3)


『10人の勇者と1人の愚か者』

’98年ワールドカップ。アルゼンチンと対戦したイングランドはベッカムの退場により敗北する。
それを上記の言葉でイングランドのマスコミは飾った。
今日もそれが当てはまるのではないであろうか。
ルーニーはまだ20歳を過ぎたばかりだ。
以前ほどの情緒不安定は収まったが、まだ精神的な成熟には至っていない。

その悪の虫が今日、この試合に出てしまった。
自分を制御できないルーニーは、あろう事かプロとしてチームメイトのクリスティアーノ=ロナウドを突き飛ばしてしまう。
その後、暴言により一発レッド。

イングランドの劣勢はその時点で決定された。

しかしイングランドの“魂”のディフェンス、リオ=ファーディナンドとジョン=テリーは幾度と無くピンチを救う。

もつれ込んだままのPK戦では、イングランドの主力、ランパードとジェラードが失敗を犯してしまう。
役者最後のシュートを決めたクリスティアーノ=ロナウドだ。冷静にフェイントを交えゴールを決めた。
助演はキーパーのリカルド。イングランドのPK全てに反応していた。

敗北が決定した時、普段、絶対に涙を流すことのないリオとテリーが肩を震わせて涙を流す姿を見て私も涙が止まらなかった。
敗れても“魂”のディフェンダーは輝いていた。

最大の凡戦をリオとテリーが“魂”の防衛戦を演出してくれた。

今日からルーニーは批判に耐える日々が続く。


○ フランスVSブラジル (1-0)

ブラジル退治の専門家ジダンの登場である。
ジダンの動きは、日を追うごとに時間が巻き戻されている。
さらにボールのタッチ一つ一つが芸術の域まで達して、サッカーファンに甘い吐息をつかせる。
ジダンのプレーを一瞬でも見逃すな!

ブラジル代表監督パヘイラは大きな批判を受けることであろう。
何故、頑なにロナウドを使い続けたか。
フランスサイドとしてはロナウドがボールを持てば、ある程度の安心感はあったのではないか。
もちろん危険な選手であることに間違いは無いのだが、ゴールの匂いはまるでしない。

フランスで素晴らしかったのは、ヴィエラとマケレレのボランチコンビである。
ブラジルが攻撃に移る瞬間に彼らの強烈なプレスを受けることとなる。
それによってブラジルの攻撃のテンポをずれ、リズムが狂う。
ロナウジーニョの喘ぎが画面を通じて伝わってくるようだった。

さらに今日のブラジルはセットプレーに集中を欠いていた。
その唯一の失点はジダンのフリーキックから、完全にノーマークとなったアンリのゴール。

攻撃にアクセント無いブラジルがロビーニョを投入したのは残り10分ほど。
その遅すぎる投入にブラジルサポーターは大きな失望を感じたのではないか。

ジダンの炎はまだ燃えている。ジダンの火を消すな!ジダンを燃やし続けよ!

伝説をまだ終わらせてはいけない。
# by mau46 | 2006-07-02 15:16 | スポーツ

トーナメント準々決勝 6月30日

ついに始まったクォーターファイナル。

高校野球でもなんでもクォーターファイナルが一番オモシロイと言う。

ここまできたら楽な戦いは一つとしてない。
観戦するこちら側にも緊張が走る。

○ ドイツVSアルゼンチン (1-1 PK4-2)

相撲には負けずに試合で負ける。ルールがある限り、これは必ずついてまとうものだ。
この試合は数少ない私の好きなアルゼンチン選手、アジャラに注目したい。

「彼にファールした選手は、数分後ピッチに倒れることになる」

アジャラにファールをすると、その選手は知らない間にアジャラによってピッチ上に葬られる。しかも合法的に。
アジャラはカードをもらわない。ルールに乗っ取ってマークを殺すのだ。
例えばドイツのコーナーキックのシーンでアジャラはドイツのエースバラックのマークについた。その執拗なマークにバラックは審判に不満を訴える。さらにアジャラを突き飛ばすように払いのけようとする。
テレビはそこまでだった。しかし、ドイツのコーナーのチャンスが失敗に終わった時、審判の笛が鳴った。バラックのアジャラへのファールをとったのだ。しかしおかしい。倒れているのはバラックである。バラックはアジャラを払い除けようとしているのだが、知らない間にアジャラの腕を顔面に食らっていた。
これがアジャラである。合法的に相手を葬る。誰も知らない間に。

今日、アジャラは1点を挙げた。
しかし、PKで外した。
アジャラに始まりアジャラに終わる。そんな試合だった。

日本代表に必要なものはアジャラのハートだ。

しかしドイツのGKレーマンの冴えはすさまじい。
アルゼンチンのPK全てに反応していた。
一つも逆をつかれなかった。
最高の冴えを見せてくれた。

泣くなカンビアッソ。お前の外したPKは歴史になって、そして誰かがその歴史をまた美しく塗り替えてくれるのだ。
それほどお前のプレーはこの大会輝いていた。

○ イタリアVSウクライナ (3-0)

全ては先取点だった。
ウクライナが取ればゲームは動く。
イタリアが取ればゲームは沈黙する。

しかし先制点はイタリアだった。しかも試合開始6分。
これは相当予想外だった。

先取点を取られたウクライナは攻める。
しかし今日のイタリアのディフェンスはカテナチオ復権を匂わせるものだった。
カテナチオとは閂(かんぬき)の意味で、鍵をかけてしまう事である。つまり1点入れればあとは鍵をかけて誰も入れさせないサッカーをする。
それに今日のイタリアディフェンスは“魂"がプラスされていた。
結局3点を入れられてウクライナは敗れ去るのだが、得点の可能性は見せた。
しかしその夢を乗せたウクライナのヘディングシュートはイタリアキーパーブッフォンのパンチングによって打ち砕かれる。ブッフォンはその飛び込んだ勢いのまま、顔面をゴールポストに直撃させてしまう。ボールがクリアされたのを確認したブッフォンは初めてその激痛に気づいたように倒れこむ。
これが“魂”なのだ。

このレベルまでくれば、プレーに“魂”が乗ったチームが勝ち残る。
ウクライナも“魂”が溢れたが、イタリアの方がほんの少し“魂”が多く乗っていた。

これも勝負である。
# by mau46 | 2006-07-01 21:11 | スポーツ


スポーツに関するコラムを書いてます。

by mau46